プロダクトデザイナー・富田一彦さんと巡る「トミタリア」

tomitalia

 

長崎出身のプロダクトデザイナー、富田一彦さんの創作活動を総覧する
展覧会「トミタリア 富田一彦の世界」

 

佐世保から高速バスに乗り込み約一時間半、長崎県美術館で開催されている展覧会「トミタリア 富田一彦の世界」に行ってきました。

富田一彦さんは、イタリア・ミラノを拠点に、20年にわたり生活に根ざした量産製品をデザインしてきたプロダクトデザイナーです。

 

TOTTOTTO Y-pot

TOTTOTTO Y-pot/1995
ポット/肥前吉田焼/トミタデザイン
ⓒ富田一彦

世界約120都市以上の産地と連携し作品を制作

富田さんの作品といえば、Y字のデザインが特徴的な「TOTTOTTO Y-pot/1995」や、イタリアCOVO社の食器シリーズ「MILMIL/2000」くらいしか知らなかったのですが、今回展覧会にきてみて、その多岐にわたるジャンルの作品群に驚きました。

食器、カトラリー、ガラス作品、照明、家具や家のデザイン、階段まで設計していました。それら約100作品を組み合わせた展示空間も、もちろん富田さんのデザインです。

会場に入ると、まず目に入る階段「SCALATTA/2006」で視線が上に誘導され、空間に広がりを感じます。天井からは、海と方舟を表現したスクリーン「BOND-IN DIVERSITY/2011」がつり下げられ、側を通るとふわりとゆらめく様子はまるで呼吸をしているよう。正面には展覧会チラシにも使われたクッション「GRULI/2006」が楽しく壁面を彩っていました。

 

プロダクトデザイナー・富田一彦さん

プロダクトデザイナー・富田一彦さん

良い意味で予想を裏切られた会場構成に気分もあがり、気合いをいれてじっくり展示を見始めたとき、男性から声をかけられドキドキ(笑)。なんと富田一彦さんご本人ではありませんか! そこからは贅沢にもプライベートギャラリーツアーの始まりです。

「僕はピアノを弾けないのだけど」と言いながら紹介してくれたのが、ロンドンのRoyal College of Art(王立美術大学院)での卒業制作で作ったというピアノ「Hadaka-no piano ‘Aria’/1992」。ピアノって完成された形のように感じますが、デザインできるんだ、という驚き。オープニングセレモニーでは実際にこのピアノが演奏に使われたのだそう。撮影不可だったのでお見せできずに残念です。

 

 

使い手の生活に寄り添うデザイン
長崎の文化や伝統が育む世界観

会場内の撮影ポイントにもなっている「GRULI」は、レーザーカットしたスウェード素材のリングを、白い熱着テープを用い無縫製で“ぐるり”と繋ぎ合わせ、デザイン的にも完成させたクッション。中心に穴があいたドーナツ状の形状で、実は介護用品として開発したものなのだとか。「インテリアにかわいいと、一般の方にも好評なんですよ」と富田さん。

「介護が必要とまでいかなくても、年をとっていく中で、少し不便を感じることもでてくるから(笑)」とご自身の思いを含みながら、「それをデザインでサポートできるといいよね」と語ってくれました。

他にも数々の作品を解説つきで見て回ったわけですが、総覧して感じたのは、使い手の生活に寄り添うデザイン、そして長崎出身という富田さんのルーツ。

海外で活動をするきっかけとなった代表作「TOTTOTTO Y-pot」は肥前吉田焼、「MILMIL」は波佐見焼。産地が近く身近なものだった影響もあるでしょうし、富田さんの作品に、同じ音を重ねたネーミングが多いのは、長崎弁を意識したものであることがわかります。

 

プロダクトデザイナー・富田一彦さん

お茶目なポーズをとってくれた富田さん

「デザインは楽しくなくっちゃ」

少しの時間ご一緒しただけではありますが、音楽一家だったという育った環境や、長崎出身だからこそ育まれた長崎の文化や伝統への意識、イタリアでの活動やさまざまな分野のプロジェクトで培った視点、大切な人たちとの出会い、そういったものが富田さんの中で混ざり合い、デザインとして生み出されていることを色濃く感じる展覧会でした。

現在は日本に拠点を移して活動をしている富田さん。お会いした日も、最新プロジェクトだという靴のデザインのため、片足ずつ異なる試作品を履いていました! 旺盛な創作意欲で、これからもどんなデザインを見せてくれるのか楽しみです。

「デザインは楽しくなくっちゃ」そう語る富田さんの言葉が印象に残りました。

 

 


TOMITADESIGN
http://www.tomitadesign.com/


 

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